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III 胃腸に作用する薬
1 胃の薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)
  1)胃の不調、薬が症状を抑える仕組み
  2)代表的な配合成分等、主な副作用、相互作用、受診勧奨
2 腸の薬(整腸薬、止瀉薬、瀉下薬)
  1) 腸の不調、薬が症状を抑える仕組み
  2)代表的な配合成分等、主な副作用
  3)相互作用、受診勧奨
3 胃腸鎮痛鎮痙薬
  1)代表的な鎮痙成分、症状を抑える仕組み
  2)主な副作用、相互作用、受診勧奨
4 その他の消化器官用薬
  1)浣腸薬
  2)駆虫薬

Ⅲ 胃腸に作用する薬

1  胃の薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)

1)胃の不調、薬が症状を抑える仕組み

 胃の働きに異常が生じると、胃液の分泌量の増減や食道への逆流が起こったり、胃液による消化作用から胃自体を保護する働きや胃の運動が低下して、胸やけや胃の不快感、消化不良、胃もたれ、食欲不振等の症状として現れる。また、胃の働きに異常を生じていなくても、食べ過ぎたときなど、胃内容物の量に対してそれを処理する働きが追いつかないことにより、腹部に不調を感じる場合もある。

 吐き気や嘔吐は、延髄にある嘔吐中枢の働きによって起こる。嘔吐中枢が刺激される経路はいくつかあるが、消化管での刺激が副交感神経系を通じて嘔吐中枢を刺激する経路も知られており、胃の痙攣等によって吐き気が起きている場合がある。

 制酸薬は、胃液の分泌亢進による胃酸過多や、それに伴う胸やけ、腹部の不快感、吐き気等の症状を緩和することを目的とする医薬品である。その配合成分としては、胃酸の働きを弱めるもの、胃液の分泌を抑えるものなどが用いられる。

 健胃薬は、弱った胃の働きを高めること(健胃)を目的とする医薬品である。配合される生薬成分は独特の味や香りを有し、唾液や胃液の分泌を促して胃の働きを活発にする作用があるとされる。

 消化薬は、炭水化物、脂質、蛋白質等の分解に働く酵素を補う等により、胃や腸の内容物の消化を助けることを目的とする医薬品である。

 これらのほか一般用医薬品には、様々な胃腸の症状に幅広く対応できるよう、制酸、胃粘膜保護、健胃、消化、整腸、鎮痛鎮痙、消泡ii等、それぞれの作用を目的とする成分を組み合わせた製品(いわゆる総合胃腸薬)もある。制酸と健胃のように相反する作用を期待するものが配合されている場合もあるが、胃腸の状態によりそれら成分に対する反応が異なり、総じて効果がもたらされると考えられている。しかし、消化不良、胃痛、胸やけなど症状がはっきりしている場合は、効果的に症状の改善を図るため、症状に合った成分のみが配合された製品が選択されることが望ましい。

 健胃薬、消化薬、整腸薬又はそれらの目的を併せ持つものには、医薬部外品として製造販売されている製品もあるが、それらは人体に対する作用が緩和なものとして、配合できる成分やその上限量が定められており、また、効能・効果の範囲も限定されている。

 副交感神経系を経由する刺激以外の、嘔吐中枢が刺激される主な経路としては、内耳の前庭にある平衡器官の不調によって生じる刺激や、大脳皮質の興奮による刺激などがあり、また、延髄にある受容体が薬物などにより直接刺激されることによって誘発される嘔吐もある。

2)代表的な配合成分等、主な副作用、相互作用、受診勧奨

(a) 制酸成分
 中和反応によって胃酸の働きを弱めること(制酸)を目的として、 炭酸水素ナトリウム(重曹)のほか、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ジヒドロキシアルミニウムモノアセテート等のアルミニウムを含む成分、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウムを含む成分、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等のアルミニウムとマグネシウムの両方を含む成分、沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等のカルシウムを含む成分、又はこれらの成分を組み合わせたもの等が配合されている場合がある。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、胃酸の中和作用のほか、胃粘膜にゼラチン状の皮膜を形成して保護する作用もあるとされる。

 また、ボレイ(カキの貝殻)等の生薬成分も、それらに含まれる炭酸カルシウムによる作用を期待して用いられる。

 これらの制酸成分を主体とする胃腸薬については、酸度の高い食品と一緒に使用すると胃酸に対する中和作用が低下することが考えられるため、炭酸飲料等での服用は適当でない。

 制酸成分のうちアルミニウムを含む成分については、透析療法を受けている人が長期間服用した場合にアルミニウム脳症及びアルミニウム骨症を引き起こしたとの報告があり、透析療法を受けている人では使用を避ける必要がある。また、透析治療を受けていない人でも、長期連用は避ける必要がある。

 腎臓病の診断を受けた人では、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の無機塩類の排泄が遅れたり、体内に貯留しやすくなるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

 制酸成分は他の医薬品(かぜ薬、解熱鎮痛薬等)でも配合されていることが多く、併用によって制酸作用が強くなりすぎる可能性があるほか、高カルシウム血症、高マグネシウム血症等を生じるおそれがあるため、同種の無機塩類を含む医薬品との相互作用に注意される必要がある。また、カルシウム、アルミニウムを含む成分については止瀉薬、マグネシウムを含む成分については瀉下薬に配合される成分でもあり、それぞれ便秘、下痢等の症状に注意されることも重要である。

(b) 健胃成分
 味覚や嗅覚を刺激して反射的な唾液や胃液の分泌を促すことにより、弱った胃の働きを高めることを目的として、オウバク、オウレン、センブリ、ゲンチアナ、リュウタン、ケイヒ、ユウタン等の生薬成分が配合されている場合がある。

 これら生薬成分が配合された健胃薬は、散剤をオブラートで包む等、味や香りを遮蔽する方法で服用されると効果が期待できず、そのような服用の仕方は適当でない。

 ① オウバク、オウレン
 オウバク(ミカン科キハダの樹皮)、オウレン(キンポウゲ科オウレンの根茎)は、いずれも苦味による健胃作用を期待して用いられる。

 日本薬局方収載のオウバク末、オウレン末は、止瀉薬としても用いられる。止瀉薬における注意については、Ⅲ-2(腸の薬)を参照のこと。

 日本薬局方収載のオウバク末は、外用薬としても用いられるが、その場合についてはⅩ(皮膚に用いる薬)を参照のこと。

 ② センブリ
 リンドウ科のセンブリの開花期の全草を用いた生薬で、苦味による健胃作用を期待して用いられる。
日本薬局方収載のセンブリ末は、健胃薬のほか止瀉薬としても用いられる。

 ③ ゲンチアナ、リュウタン
 ゲンチアナ(リンドウ科のゲンチアナの根及び根茎)、リュウタン(リンドウ科のトウリンドウ又はその他同族植物の根及び根茎)は、いずれも苦味による健胃作用を期待して用いられる。

 ④ ユウタン
 クマ科のヒグマ又はその他近縁動物の胆汁の乾燥物を用いた生薬で、苦味による健胃作用を期待して用いられるほか、消化成分として配合される場合もある。
同様の作用を期待して、ウシ等に由来する動物胆が用いられることもある。

 ⑤ ケイヒ
 クスノキ科のシナニッケイ又はその他同属植物の樹皮及び周皮の一部を除いたものを用いた生薬で、香りによる健胃作用を期待して用いられる。

 ⑥ その他
 香りによる健胃作用を期待して用いられる生薬(芳香性健胃生薬)として、コウボク(モクレン科のホオノキ又はその同属植物の樹皮)、ショウキョウ(ショウガ科のショウガの根茎)、チョウジ(フトモモ科のクローブの蕾つぼみ)、チンピ(ミカン科のウンシュウミカンの成熟した果皮)、ソウジュツ(キク科のホソバオケラ又はシナオケラの根茎)、ビャクジュツ(キク科オケラ又はオオバナオケラの根茎)、ウイキョウ(Ⅱ-2(口腔くう咽いん喉こう薬、うがい薬)参照。)、オウゴン(Ⅴ-1(痔の薬)参照。)等が配合されている場合がある。

 味覚や嗅覚に対する刺激以外の作用による健胃成分として、乾燥酵母や塩化カルニチンが配合されている場合がある。

 乾燥酵母は、胃腸の働きに必要な栄養素を補給することにより胃の働きを高めるものと考えられている。

 塩化カルニチンは、生体内に存在する有機酸の一種であり、その働きは必ずしも明らかにされていないが、胃液分泌を促す、胃の運動を高める、胃壁の循環血流を増す等の作用があるとされ、胃の働きの低下や食欲不振の改善を期待して、胃腸薬や滋養強壮保健薬に用いられる。

(c) 消化成分
 炭水化物、脂質、蛋たん白質、繊維質等の分解に働く酵素を補うことを目的として、ジアスターゼ、プロザイム、ニューラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ又はその複合酵素(ビオジアスターゼ、タカジアスターゼ)等が配合されている場合がある。

 胆汁末や動物胆(ユウタンを含む。)、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸は、胆汁の分泌を促す作用(利胆作用)があるとされ、消化を助ける効果を期待して用いられる。これらの成分は肝臓の働きを高める作用もあるとされるが、肝臓病の診断を受けた人ではかえって症状を悪化させるおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

 ウルソデオキシコール酸については、胎児毒性の可能性があるため、妊婦又は妊娠していると思われる女性は使用を避けることが望ましい。

(d) その他の成分

 ① 胃粘膜保護・修復成分

 胃粘液の分泌を促す、胃粘膜を覆って胃液による消化から保護する、荒れた胃粘膜の修復を促す等の作用を期待して、アズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン)、アルジオキサ、スクラルファート、ゲファルナート、ソファルコン、テプレノン、塩酸セトラキサート、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、メチルメチオニンスルホニウムクロライド等が配合されている場合がある。このほか、胃粘膜保護作用を期待して、アカメガシワ(トウダイグサ科のアカメガシワの樹皮)等の生薬成分も用いられる。

 これらのうち、アルジオキサ(アラントインと水酸化アルミニウムの複合体)、スクラルファートはアルミニウムを含む成分であるため、透析を受けている人では使用を避ける必要がある。透析治療を受けていない人でも、長期連用は避ける必要がある。また、腎臓病の診断を受けた人では、アルミニウムが体内に貯留しやすいため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

 ソファルコン、テプレノンについては、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある。肝臓病の診断を受けた人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

 テプレノンについては、その他の副作用として腹部膨満感、吐き気、腹痛、頭痛、皮下出血、便秘、下痢、口渇が現れることがある。

 塩酸セトラキサートは、体内で代謝されてトラネキサム酸(I-1(かぜ薬)参照。)を生じることから、血栓のある人、血栓を起こすおそれのある人では、生じた血栓が分解されにくくなることが考えられるので、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

 ② 胃粘膜の炎症を和らげる成分(抗炎症成分)
 胃粘膜の炎症を和らげることを目的として、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、又は生薬成分としてカンゾウが配合されている場合がある。グリチルリチン酸を含む成分又はカンゾウを含有する医薬品に共通する留意点については、Ⅰ-1(かぜ薬)、Ⅱ-1(咳止め・痰を出しやすくする薬)を参照のこと。

 ③ 消泡成分
 消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すことを目的として、ジメチルポリシロキサン(別名ジメチコン)が配合されている場合がある。

 ④ 胃液分泌抑制成分
 胃液の分泌は副交感神経系からの刺激によって亢こう進することから、過剰な胃液の分泌を抑える作用viを期待して、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンの働きを抑えるロートエキスや塩酸ピレンゼピンが配合されている場合がある。これらの成分を含有する胃腸薬では、胃腸鎮痛鎮痙薬、乗物酔い薬との併用を避ける必要がある。

 ロートエキスについては、Ⅲ-3(胃腸鎮痛鎮痙薬)を参照のこと。

 塩酸ピレンゼピンは、消化管の運動にはほとんど影響を与えずに胃液の分泌を抑える作用を示すとされる。しかし、消化管以外では一般的な抗コリン作用のため、排尿困難、動悸、目のかすみの副作用を生じることがある。排尿困難の症状がある人、緑内障の診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。また、使用後は乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。なお、まれに重篤な副作用としてアナフィラキシー様症状を生じることがある。

◇ 漢方処方製剤
 胃の不調を改善する目的で用いられる漢方処方製剤としては、安中散、人参湯(理中丸)、平胃散、六君子湯等がある。これらはいずれも構成生薬としてカンゾウを含む。カンゾウを含有する医薬品に共通する留意点については、Ⅱ-1(咳止め・痰を出しやすくする薬)を参照のこと。また、いずれも比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがあり、その場合に共通する留意点については、ⅩⅣ-1(漢方処方製剤)を参照のこと。

(a) 安中散
 痩やせ型で腹部筋肉が弛緩する傾向にあり、胃痛又は腹痛があって、ときに胸やけ、げっぷ、食欲不振、吐き気などを伴う人における、神経性胃炎、慢性胃炎、胃アトニーに適するとされる。まれに重篤な副作用として、肝機能障害を生じることが知られている。

(b) 人参湯(理中丸)
 手足などが冷えやすく、尿量が多い人における、胃腸虚弱、胃アトニー、胃痛、下痢、嘔吐に適すとされる。下痢又は嘔吐に用いる場合には、漫然と長期の使用は避け、1週間位使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談がなされることが望ましい。

(c) 平胃散
 胃がもたれて消化不良の傾向がある人における、急性・慢性胃カタル、胃アトニー、消化不良、食欲不振に適すとされる。急性胃カタルに用いる場合には、漫然と長期の使用は避け、5~6回使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談がなされることが望ましい。

(d) 六君子湯
 胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすい人における、胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐に適すとされる。まれに重篤な副作用として、肝機能障害を生じることが知られている。

【相互作用】
  漢方処方製剤、生薬成分が配合された医薬品における相互作用に関する一般的な事項については、ⅩⅣ(漢方処方製剤・生薬製剤)を参照のこと。

【受診勧奨】
 一般用医薬品の胃薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)は、基本的に、一時的な胃の不調に伴う諸症状を緩和する目的で使用されるものであり、慢性的に胸やけや胃部不快感、胃部膨満感等の症状が現れる場合、又は医薬品を使用したときは治まるが、やめると症状がぶり返し、医薬品が手放せないような場合には、食道裂孔ヘルニアviii、胃・十二指腸潰瘍、胃ポリープ等を生じている可能性も考えられ、医療機関を受診することが望ましい。

 制酸薬は、胃内容物の刺激によって促進される胃液分泌から胃粘膜を保護することを目的として、食前又は食間に服用することとなっているものが多いが、暴飲暴食による胸やけ、吐き気(二日酔い・悪酔いのむかつき、嘔気)、嘔吐等の症状を予防するものではない。「腹八分目を心がける」「良く噛んでゆっくりと食べる」「香辛料やアルコール、カフェイン等を多く含む食品の摂取を控えめにする」等、生活習慣の改善が図られることも重要である。

 嘔吐に発熱や下痢、めまいや興奮を伴う場合、胃の中に吐くものがないのに吐き気が治まらない場合等には、医療機関を受診することが望ましい。特に、乳幼児や高齢者で嘔吐が激しい場合には、脱水症状を招きやすく、また、吐瀉物が気道に入り込んで呼吸困難を生じることもあるため、医師の診療を受けることが優先されるべきである。

 吐き気や嘔吐に腹部の激しい痛みを伴う場合の受診勧奨については、Ⅲ-3(胃腸鎮痛鎮痙薬)を参照のこと。


2  腸の薬(整腸薬、止瀉薬、瀉下薬)

1)腸の不調、薬が症状を抑える仕組み


 腸における消化、栄養成分や水分の吸収が正常に行われなかったり、腸管がその内容物を送り出す運動に異常が生じると、便秘や軟便、下痢といった症状が現れる。

 水分の吸収は大半が小腸で行われ、大腸では腸内容物が糞便となる過程で適切な水分量に調整がなされるが、糞便には、腸内細菌の活動によって生じる物質や腸内細菌自体及びその死骸がいが多く含まれ、それらも便通や糞便の質に影響を与える。

 腸の働きは自律神経系により制御されており、異常を生じる要因は腸自体やその内容物によるものだけでなく、腸以外の病気等が自律神経系を介して腸の働きに異常を生じさせる場合もある。

 下痢が起こる主な要因としては、急性の下痢では、体の冷えや消化不良、細菌やウイルス等の消化器感染(食中毒など)、緊張等の精神的なストレスによるものがあり、慢性の下痢については、腸自体に病変を生じている可能性がある。便秘が起こる主な要因としては、一過性の便秘では、環境変化等のストレスや医薬品の副作用などがあり、慢性の便秘については、加齢や病気による腸の働きの低下、便意を繰り返し我慢し続けること等による腸管の感受性の低下などがある。また、これらの要因が重なり合って、便秘と下痢が繰り返し現れる場合もある。

 整腸薬は、腸の調子や便通を整える(整腸)、腹部膨満感、軟便、便秘に用いられることを目的とする医薬品であり、その配合成分としては、腸内細菌の数やバランスに影響を与えたり、腸の活動を促す成分が主として用いられる。

 止瀉薬は、下痢、食あたり、吐き下し、水あたり、下り腹、軟便等に用いられること(止瀉。瀉はお腹を下す意味)を目的とする医薬品であり、その配合成分としては、腸やその機能に直接働きかけるもののほか、腸管内の環境を整えて腸に対する悪影響を減らすことによる効果を期待するものもある。

 瀉下薬(下剤)は、便秘症状及び便秘に伴う肌荒れ、頭重、のぼせ、吹き出物、食欲不振、腹部膨満、腸内異常発酵、痔の症状の緩和、又は腸内容物の排除に用いられること(瀉下)を目的とする医薬品であり、その配合成分としては、腸管を直接刺激するもの、腸内細菌の働きによって精製した物質が腸管を刺激するもの、糞便のかさや水分量を増すもの等がある。

 整腸薬、瀉下薬では、医薬部外品として製造販売されている製品もあるが、それらは人体に対する作用が緩和なものとして、配合できる成分(瀉下薬については、糞便のかさや水分量を増すことにより作用する成分に限られる。)やその上限量が定められている。また、効能・効果の範囲も限定され、例えば、下痢・便秘の繰り返し等の場合における整腸については、医薬品においてのみ認められている。

2)代表的な配合成分等、主な副作用

(a) 整腸成分
 腸内細菌のバランスを整えることを目的として、ビフィズス菌、アシドフィルス菌、ラクトミン、乳酸菌、酪酸菌等の生菌成分が用いられる。

 ケツメイシ(マメ科エビスグサの種子)、ゲンノショウコ(フウロソウ科ゲンノショウコの全草)、アセンヤク(アカネ科ガンビールの葉及び若枝)等の生薬成分が、整腸作用を期待して配合されている場合もある。日本薬局方収載のケツメイシ、ゲンノショウコについては、煎薬として整腸(便通を整える。)、腹部膨満感等に用いられる。

 【マレイン酸トリメブチン】 消化管(胃及び腸)の平滑筋を支配している自律神経(交感神経及び副交感神経)に働いて、消化管の運動を調整する作用(消化管運動が低下しているときは亢こう進的に、運動が亢こう進しているときは抑制的に働く。)があるとされる。

 まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある。肝臓病の診断を受けた人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

(b) 止瀉成分

 ① 収斂成分
 腸粘膜の蛋白質と結合して不溶性の膜を形成し、腸粘膜をひきしめる(収斂)ことにより、腸粘膜を保護し、炎症を鎮めることを目的として、次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス等のビスマスを含む成分、タンニン酸アルブミン等が配合されている場合がある。タンニン酸アルブミンに含まれるタンニン酸やその類似の物質を含む生薬成分としてゴバイシ(ウルシ科ヌルデの葉上の虫こぶ)、オウバク、オウレン等も用いられる。

 ビスマスを含む成分は収斂作用のほか、腸内で発生した有毒物質を分解する作用も持つとされる。オウバク、オウレンは、収斂作用のほか、抗菌作用、抗炎症作用も期待して用いられる。

 収斂成分を主体とする止瀉薬については、細菌性の下痢や食中毒のときに使用して腸の運動を鎮めると、かえって状態を悪化させるおそれがある。急性の激しい下痢又は腹痛・腹部膨満・吐き気等の症状を伴う人では、細菌性の下痢や食中毒が疑われるため、安易な使用を避けることが望ましいとされている。

 次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス等のビスマスを含む成分については、海外において長期連用した場合に精神神経症状(不安、記憶力減退、注意力低下、頭痛等)が現れたとの報告があり、1週間以上継続して使用しないこととされている。アルコールと一緒に摂取されると、循環血液中への移行が高まって精神神経症状を生じるおそれがあり、服用時は飲酒を避ける必要がある。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の診断を受けた人では、損傷した粘膜からビスマスの吸収が高まるおそれがあるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。なお、循環血液中に移行したビスマスは胎盤関門を通過することが知られており、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避けることが望ましい。

 タンニン酸アルブミンについては、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることがある。タンニン酸アルブミンに含まれるアルブミンは、牛乳に含まれる蛋白質(カゼイン)から精製された成分であるため、牛乳にアレルギーがある人では使用を避ける必要がある。

 ② 塩酸ロペラミド
 塩酸ロペラミドが配合された止瀉薬は、食べ過ぎ・飲み過ぎによる下痢、寝冷えによる下痢の症状に用いられることを目的としており、食あたりや水あたりによる下痢については適用対象でない。発熱を伴う下痢や、血便のある場合又は粘液便が続くような場合は、本剤の適用対象でない可能性があり、症状の悪化、治療期間の延長を招くおそれがあるため、安易な使用は避けることが望ましい。なお、15歳以下の小児には適用がない。

 使用は短期間にとどめることが望ましく、2~3日間使用しても症状の改善がみられない場合には、医師の診療を受けることが望ましいとされている。

 腸管の運動を低下させる作用を示し、胃腸鎮痛鎮痙薬の併用は避ける必要がある。また、水分や電解質の分泌も抑える作用もあるとされる。効き目が強すぎて便秘が現れるすことがあり、まれに重篤な副作用としてイレウス様症状を生じることもある。便秘を避けなければならない肛門疾患がある人では、使用を避けることが望ましい。

 このほか重篤な副作用として、まれにショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性皮膚壊死症候群を生じることがある。

 中枢神経系を抑制する作用もあり、副作用としてめまいや眠気が現れることがあるため、乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。また、中枢抑制作用が増強するおそれがあるため、服用時は飲酒しないこととされている。

 吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが知られており、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避けることが望ましい。

 ③ 腸内殺菌成分
 細菌感染による下痢の症状を鎮めることを目的として、塩化ベルベリン、タンニン酸ベルベリン、アクリノール、クレオソート等が用いられる。これらは、通常の腸管内に生息する腸内細菌に対しても抗菌作用を示すが、ブドウ球菌や大腸菌などに対する抗菌作用の方が優位であることと、下痢状態では腸内細菌のバランスが乱れている場合が多いため、結果的に腸内細菌のバランスを正常に近づけることにつながると考えられている。

 塩化ベルベリン、タンニン酸ベルベリンに含まれるベルベリンは、生薬のオウバクやオウレンの中に存在する物質のひとつであり、抗菌作用のほか、抗炎症作用も併せ持つとされる。オウバクのエキス製剤は、苦味による健胃作用よりも、ベルベリンによる止瀉作用を期待して、消化不良による下痢、食あたり、吐き下し、水あたり、下り腹、軟便等の症状に用いられる。

 タンニン酸ベルベリンは、タンニン酸(収斂作用)とベルベリン(抗菌作用)の化合物であり、消化管内ではタンニン酸とベルベリンに分かれて、それぞれ止瀉に働くことを期待して用いられる。

 クレオソートについては、殺菌作用のほか、局所麻酔作用もあるとされる。局所麻酔作用に関する注意等についてはⅢ-3(胃腸鎮痛鎮痙薬)を参照のこと。

④ 吸着成分
 腸管内の異常発酵等によって生じた有害な物質を吸着させることを目的として、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、天然ケイ酸アルミニウム、ヒドロキシナフトエ酸アルミニウム等が配合されている場合がある。同様の作用を期待して、カオリンや薬用炭などの生薬成分も用いられる。

 アルミニウムを含む成分に共通する留意点については、Ⅲ-1(胃の薬)を参照のこと。

(c) 瀉下成分

 ① 刺激性瀉下成分
 腸管を刺激して反射的な腸の運動を引き起こすことによる瀉下作用を目的として配合される成分である。刺激性瀉下成分が配合された瀉下薬については、大量に使用することは避けることとされている(腸管粘膜への刺激が大きくなり、激しい腹痛や腸管粘膜に炎症を引き起こすおそれがある)。

 I) 小腸刺激性瀉下成分
 ヒマシ油は、ヒマシ(トウダイグサ科のトウゴマの種子)を圧搾して得られた油を用いた生薬で、小腸でリパーゼの働きによって生じる分解物が、小腸を刺激することで瀉下作用をもたらすと考えられている。

 日本薬局方収載のヒマシ油及び加香ヒマシ油は、腸内容物の急速な排除を目的として用いられる。急激で強い瀉下作用(峻下作用)を示すため、激しい腹痛又は悪心・嘔吐の症状がある人、妊婦又は妊娠していると思われる女性、3歳未満の乳幼児では使用を避けることとされている。

 主に誤食・誤飲等による中毒の場合など、腸管内の物質をすみやかに体外に排除させなければならない場合に用いられるが、防虫剤や殺鼠剤を誤って飲み込んだ場合のような脂溶性の物質による中毒には使用を避ける必要がある(ナフタレンやリン等がヒマシ油に溶け出して、中毒症状を増悪させるおそれがある)。

 吸収された成分の一部が乳汁中に移行して、乳児に下痢を引き起こすおそれがあり、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避ける必要がある。

 ii) 大腸刺激性瀉下成分
 大腸を刺激して排便を促すことを目的として、センナ(マメ科のセンナの果実や葉)、センナから抽出された成分であるセンノシド、ダイオウ(タデ科のダイオウ及びその同属植物又はそれらの種間雑種の根茎)、カサントラノール、ビサコジル、ピコスルファートナトリウム等が用いられる。

 このほか、大腸刺激による瀉下作用を期待して、センノシドに類似の物質を含むアロエ(アロエ科ケープアロエ及びこれとアロエ・アフリカーナ又はアロエ・スピカータとの雑種の葉から得た乳汁)や、ジュウヤク(ドクダミ科ドクダミの全草)、ケンゴシ(ヒルガオ科アサガオの種子)等の生薬成分が配合されている場合もある

 刺激性瀉下成分が配合された瀉下薬は一般に、腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがある。特に、センナ及びセンノシドが配合された瀉下薬については、妊婦又は妊娠していると思われる女性では、使用を避けることが望ましい。

 センナ、センノシド、ダイオウ、カサントラノールについては、吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが知られている。乳児に下痢を生じるおそれがあり、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避ける必要がある。構成生薬にダイオウを含む漢方処方製剤においても、同様に、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避けることとされている。

 【センナ、センノシド、ダイオウ】
 センナ中に存在するセンノシドは、胃や小腸で消化されないが、大腸に生息する腸内細菌によって分解され、分解生成物が大腸を刺激して瀉下作用をもたらすと考えられている。センノシドカルシウム等として配合されている場合もある。

 ダイオウもセンナと同様、センノシドを含み、大腸刺激性瀉下成分として用いられる。なお、ダイオウ中にはセンノシドのほか、収斂作用を示すタンニン酸類など様々な物質が存在しており、通常の用量では瀉下作用が期待されるが、大量に摂取した場合には逆に止瀉作用が現れることがある。

 ダイオウは各種の漢方処方の構成生薬としても重要であるが、瀉下を目的としない場合には瀉下作用は副作用となる。構成生薬にダイオウを含む漢方処方製剤では、瀉下作用の増強を生じて、腹痛、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすくなるため、瀉下薬の併用に注意される必要がある。

 【ビサコジル、ピコスルファートナトリウム】
 ビサコジルは、大腸のうち特に結腸や直腸の粘膜を刺激して、排便を促すと考えられている。また、結腸での水分の吸収を抑えて、糞便のかさを増大させる働きもあるとされる。内服薬のほか、浣腸薬(坐剤)としても用いられるが、その場合についてはⅢ-4(その他の消化器官用薬)を参照のこと。内服薬では、胃内で分解されて効果が低下したり、胃粘膜に無用な刺激をもたらすのを避けるため、腸内で溶けるように錠剤がコーティング等されている製品(腸溶製剤)が多い。腸溶製剤の場合、胃内でビサコジルが溶け出すおそれがあるため、服用前後1時間以内は制酸成分を含む胃腸薬の服用や牛乳の摂取を避けることとされている。

 ピコスルファートナトリウムは、胃や小腸では分解されないが、大腸に生息する腸内細菌によって分解されて、大腸への刺激作用を示すようになる。

 ② 無機塩類
 腸内容物の浸透圧を高めることで糞便中の水分量を増し、また、大腸を刺激して排便を促すことを目的として、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウムを含む成分が配合されている場合がある。また、同様な目的で硫酸ナトリウムも用いられる。

 マグネシウムを含む成分は、一般に消化管からの吸収は少ないとされているが、一部は腸で吸収されて尿中に排泄されることが知られている。腎臓病の診断を受けた人では、高マグネシウム血症を生じるおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

 硫酸ナトリウムについては、血液中の電解質のバランスが損なわれ、心臓の負担が増加し、心臓病を悪化させるおそれがある。心臓病の診断を受けた人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

 ③ 膨潤性瀉下成分
 腸管内で水分を吸収して腸内容物に浸透し、糞便のかさを増やすとともに糞便を柔らかくすることによる瀉下作用を目的として、カルメロースナトリウム(別名カルボキシメチルセルロースナトリウム)、カルメロースカルシウム(別名カルボキシメチルセルロースカルシウム)が配合されている場合がある。同様な作用を期待して、プランタゴ・オバタの種子又は種皮のような生薬成分も用いられる。

 膨潤性瀉下成分が配合された瀉下薬については、その効果を高めるため、使用と併せて十分な水分摂取がなされることが重要である。

 ④ ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS
 腸内容物に水分が浸透しやすくする作用があり、糞便中の水分量を増して柔らかくすることによる瀉下作用を期待して用いられる。

 ⑤ マルツエキス
 主成分である麦芽糖が腸内細菌によって分解(発酵)して生じるガスによって便通を促すとされている。瀉下薬としては比較的作用が穏やかなため、主に乳幼児の便秘に用いられる。なお、乳児の便秘は母乳不足又は調整乳希釈方法の誤りによって起こることもあるが、水分不足に起因する便秘にはマルツエキスの効果は期待できない。

 マルツエキスは麦芽糖を60%以上含んでおり水飴あめ状で甘く、乳幼児の発育不良時の栄養補給にも用いられる。

◇ 漢方処方製剤
 腸の不調を改善する目的で用いられる漢方処方製剤としては、桂枝加芍薬湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、麻子仁丸等がある。これらのうち、桂枝加芍薬湯及び大黄甘草湯は、構成生薬としてカンゾウを含む。カンゾウを含有する医薬品に共通する留意点については、Ⅱ-1(咳止め・痰を出しやすくする薬)を参照のこと。また、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯及び麻子仁丸は、構成生薬としてダイオウを含む。

 ① 桂枝加芍薬湯
 腹部に膨満感のある人における、しぶり腹、腹痛に適すとされる。

 短期間の使用に限られるものでないが、1週間位服用して症状の改善がみられない場合には、いったん使用を中止して専門家に相談がなされることが望ましい。

 ② 大黄甘草湯

 便秘に適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。また、本剤を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避ける必要がある。

 短期間の使用に限られるものでないが、5~6日間服用しても症状の改善がみられない場合には、いったん使用を中止して専門家に相談がなされることが望ましい。

 ③ 大黄牡丹皮湯

 比較的体力があり、下腹部痛があって、便秘しがちな人における、月経不順、月経困難、便秘、痔疾に適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。また、本剤を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避ける必要がある。 便秘、痔疾に対して用いる場合には、1週間位服用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談がなされることが望ましい。月経不順、月経困難に対して用いる場合には、比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがあり、その場合に共通する留意点については、ⅩⅣ-1(漢方処方製剤)を参照のこと。

 ④ 麻子仁丸(マシニンガン)

 便秘に適すとされるが、胃腸が弱く下痢しやすい人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。また、本剤を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避ける必要がある。 短期間の使用に限られるものでないが、5~6日間服用しても症状の改善がみられない場合には、いったん使用を中止して専門家に相談がなされることが望ましい。

3)相互作用、受診勧奨

【相互作用】
 医薬品の成分の中には副作用として便秘や下痢を生じるものがあり、止瀉薬や瀉下薬と一緒にそうした成分を含有する医薬品が併用された場合、作用が強く現れたり、副作用を生じやすくなるおそれがある。

 逆に、整腸薬や止瀉薬や瀉下薬が他の医薬品の有効性や安全性に影響を及ぼすこともある。例えば、駆虫薬は駆除した寄生虫の排出を促すため瀉下薬が併用されることがあるが、ヒマシ油を使用した場合には、駆虫成分が腸管内にとどまらず吸収されやすくなり、全身性の副作用を生じる危険性が高まるため、ヒマシ油と駆虫薬の併用は避けることとされている。

 整腸薬と止瀉薬は、いずれも効能・効果に軟便が含まれていることがあるが、生菌成分が配合された整腸薬に、腸内殺菌成分が配合された止瀉薬が併用された場合、生菌成分の働きが腸内殺菌成分によって弱められる。また、整腸薬と瀉下薬は、いずれも効能・効果に便秘が含まれているが、腸内細菌による分解を受けて作用する成分が配合された瀉下薬に、生菌成分が配合された整腸薬が併用された場合、瀉下作用が強く現れたり、副作用を生じやすくなるおそれがある。

 瀉下薬については、複数の瀉下薬を併用すると、激しい腹痛を伴う下痢や下痢に伴う脱水症状等を生じるおそれがあり、どのような種類の瀉下成分を含有するものであっても、瀉下薬を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避けることとされている。

 また、食品にも緩下作用(緩和な瀉下作用)を示すものがあり、そうした食品との相互作用についても留意されるべきである。例えば、センナの茎を用いた製品は、医薬品的な効能効果が標榜又は表示されていなければ食品として流通することが可能となっているが、ときに微量のセンノシドが含まれる場合があることが知られており、「医薬品でないから大丈夫」と安易に考えて瀉下薬と同時期に摂取された場合、複数の瀉下薬を併用した場合と同様な健康被害につながるおそれがある。

 漢方処方製剤、生薬成分が配合された医薬品における相互作用については、ⅩⅣ(漢方処方製剤・生薬製剤)を参照のこと。

【受診勧奨】
 一般用医薬品の使用はあくまで対症療法であり、下痢や便秘を引き起こした原因の特定やその解消が図られることが、一般用医薬品の適正な使用を確保する上で重要である。

 医薬品の副作用として下痢や便秘が現れることもあり、医薬品の使用中に原因が明確でない下痢や便秘を生じた場合は、安易に止瀉薬や瀉下薬によって症状を抑えようとせず、その医薬品の使用を中止して、医師や薬剤師などの専門家に相談するよう説明がなされるべきである。

 下痢、便秘のいずれに関しても、一般用医薬品により対処を図ることが適当であるか、適切な判断がなされることが重要である。過敏性腸症候群の便通障害のように下痢と便秘が繰り返し現れるものもあり、症状が長引くような場合には、医師の診療を受けることが望ましい。

 下痢は、腸管内の有害な物質を排出するために起こる防御反応でもあり、止瀉薬によって下痢を止めることでかえって症状の悪化を招くことがある。また、乳幼児や高齢者では下痢に伴って脱水症状を招きやすく、脱水症状が進むと下痢を長引かせることにつながる。下痢への対処においては水分・電解質の補給も重要である。

 下痢に発熱を伴う場合は、食中毒菌等による腸内感染症の可能性があり、また、虫垂炎や虚血性大腸炎のような重大な疾患に起因する場合もある。便に血が混じっている場合は、赤痢や腸管出血性大腸菌(O157等)、潰かい瘍性大腸炎、大腸癌などによる腸管出血の可能性がある。粘液便が続いているような場合には、腸の炎症性疾患の可能性もある。いずれも、安易に止瀉薬を用いて症状を一時的に鎮めようとするのでなく、早期に医療機関を受診して原因の特定、治療がなされることが望ましい。

 便秘については、便秘になりやすい食生活等の生活習慣の改善が図られることが重要であり、瀉下薬の使用は一時的なものにとどめることが望ましい。特に、刺激性瀉下成分を主体とする瀉下薬は、繰り返し使用されると腸管の感受性が低下して効果が弱くなるため、常用を避ける必要がある。瀉下薬が手放せなくなっているような慢性の便秘については、漫然と継続使用するよりも、医師の診療を受けることが望ましい。

 腹痛は便秘の時にしばしば起こる症状であるが、腹痛が著しい場合や便秘に伴って吐き気や嘔吐が現れた場合には、急性腹症(腸管の狭窄、閉塞そく、腹腔内器官の炎症等)の可能性がある。瀉下薬の配合成分の刺激によってその症状を悪化させるおそれがあり、安易に瀉下薬を使用せずに医師の診療を受けることが望ましい。


3  胃腸鎮痛鎮痙薬

1)代表的な鎮痙成分、症状を抑える仕組み、主な副作用

(a) 抗コリン成分
 急な胃腸の痛みは、主として胃腸の過剰な動き(痙攣)によって生じる。消化管の運動は副交感神経系の刺激によって亢進し、また、副交感神経系は胃液分泌の亢進にも働く。そのため、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンと受容体の反応を妨げることで、その働きを抑える成分(抗コリン成分)が、胃痛、腹痛、さしこみ(疝痛、癪)を鎮めること(鎮痛鎮痙)のほか、胃酸過多や胸やけに対する効果も期待して用いられる。

 胃腸鎮痛鎮痙薬に配合される抗コリン成分としては、臭化メチルベナクチジウム、臭化ブチルスコポラミン、臭化メチルオクタトロピン、塩酸ジサイクロミン、塩酸オキシフェンサイクリミン等がある。抗コリン作用を示すアルカロイドを豊富に含む生薬成分として、ロートエキス(ロートコン(ナス科のハシリドコロ又はその同属植物の根茎及び根)の抽出物)が用いられることも多い。

 これらの成分が副交感神経系の働きを抑える作用は消化管に限定されないため、散瞳による目のかすみや異常な眩まぶしさ、顔のほてり、頭痛、眠気、口渇、便秘、排尿困難等の副作用が現れることがある。重大な事故につながるおそれがあるため、抗コリン成分が配合された医薬品を使用した後は、乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。また、排尿困難の症状がある人、心臓病又は緑内障の診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。高齢者では、排尿困難や緑内障の基礎疾患を持つ場合が多く、また、一般的に口渇や便秘の副作用が現れやすいので、使用する前にその適否を十分考慮し、使用する場合にはそれらの初期症状等に常に留意する等、慎重な使用がなされることが重要である。

 臭化ブチルスコポラミンについては、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることが知られている。

 ロートエキスについては、吸収された成分の一部が母乳中に移行して乳児の脈が速くなる(頻脈)おそれがあるため、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避ける必要がある。なお、ロートエキスにより母乳が出にくくなることがある。

 臭化メチルオクタトロピンについても、吸収された成分の一部が母乳中に移行することが知られている。

(b) 塩酸パパベリン
 消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮める作用を示すとされる。抗コリン成分と異なり、胃液分泌を抑える作用は見出されない。

 抗コリン成分と異なり自律神経系を介した作用ではないが、眼圧を上昇させる作用を示すことが知られている。緑内障の診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

(c) 局所麻酔成分
 消化管の粘膜及び平滑筋に対する麻酔作用による鎮痛鎮痙の効果を期待して、アミノ安息香酸エチル、オキセサゼインのような局所麻酔成分が配合されている場合がある。

 いずれも痛みが感じにくくなることで重大な消化器疾患や状態の悪化等を見過ごすおそれがあり、長期間に渡って漫然と使用することは避けることとされている。

 アミノ安息香酸エチルについては、乳幼児ではメトヘモグロビン血症iを起こすおそれがあるため、6歳未満の小児への使用は避ける必要がある。外用薬の有効成分としても用いられるが、その場合については、Ⅴ-1(痔の薬)を参照のこと。

 オキセサゼインについては、局所麻酔作用のほか、胃液分泌を抑える作用もあるとされ、胃腸鎮痛鎮痙薬と制酸薬の両方の目的で使用される。精神神経系の副作用として、頭痛、眠気、めまい、脱力感が現れることがある。妊娠中や小児における安全性は確立されておらず、妊婦又は信心していると思われる女性、15歳未満の小児では、使用を避けることとされている。

(d) 生薬成分
 鎮痛鎮痙作用を期待して、エンゴサク(ケシ科のエンゴサクの塊茎)、シャクヤク(Ⅰ-2(解熱鎮痛薬)参照。)等が配合されている場合がある。

2)相互作用、受診勧奨

【相互作用】
 胃腸鎮痛鎮痙薬に配合されている成分は、胃腸以外に対する作用も示すものがほとんどであり、複数の胃腸鎮痛鎮痙薬が併用された場合、泌尿器系や循環器系、精神神経系などに対する作用(副作用)が現れやすくなるため、胃腸鎮痛鎮痙薬を使用している間は、他の胃腸鎮痛鎮痙薬の使用を避けることとされている。

 抗コリン成分については、胃腸鎮痛鎮痙薬以外の医薬品(かぜ薬、乗物酔い防止薬、鼻炎用内服薬等)にも配合されている場合があり、また、一部の抗ヒスタミン成分のように抗コリン作用を併せ持つものが配合されている場合(かぜ薬、睡眠改善薬、乗物酔い防止薬、鎮咳去痰薬、アレルギー用薬等)もある。抗コリン作用を有する成分を含有する医薬品どうしが併用された場合、抗コリン作用が増強され、排尿困難、目のかすみや異常な眩まぶしさ、頭痛、眠気、口渇、便秘等の副作用が現れやすくなる。

【受診勧奨】
 痛みが次第に強くなる、痛みが周期的に現れる、嘔吐や発熱を伴う、下痢や血便・血尿を伴う、原因不明の痛みが30分以上続く等の場合には、基本的に医療機関を受診することが望ましい。その際、医師の診療を受けるまでの当座の対処として一般用医薬品が使用されると、痛みの発生部位が不明確となり、原因の特定を困難にすることがあるので、原因不明の腹痛に安易に胃腸鎮痛鎮痙薬を使用することは好ましくない。

 腹部の痛みは必ずしも胃腸に生じたものとは限らず、月経困難症、胆嚢のう炎、胆管炎、胆石症、急性膵すい炎などのように、胃腸以外の臓器に起因する場合がある。血尿を伴って側腹部に痛みが生じた時は、腎臓や尿路の病気が疑われる。これらについて胃腸鎮痛鎮痙薬を使用することは適当でない。

 また、下痢に伴う腹痛については、基本的に下痢への対処が優先され、胃腸鎮痛鎮痙薬の適用となる症状でない。下痢を伴わずに腹部に痛みを生じる病気としては、上記のような胃腸以外の臓器に起因するもののほか、腸閉塞(イレウス)、アニサキス症などがある。

 小児では、内臓に異常がないにもかかわらず、へその周りに激しい痛み(ときに吐き気を伴う)が繰り返し現れることがあり(反復性臍疝痛)、精神的なストレスによる自律神経系の乱れが主な原因と考えられている。数時間以内に自然寛解する場合が多いが、長時間頻回に腹痛を訴えるような場合には、医療機関に連れて行くことが望ましい。


4  その他の消化器官用薬

1)浣腸薬

 浣腸薬は、便秘の場合に排便を促すことを目的として、直腸内に適用される医薬品である。剤型には注入剤(肛門から薬液を注入するもの)のほか、坐剤となっているものもある。

 繰り返し使用すると直腸の感受性の低下(いわゆる慣れ)が生じて効果が弱くなり、医薬品の使用に頼りがちになるため、連用しないこととされている。なお、便秘以外のときに直腸内容物の排除を目的として用いることは適当でない。

 便秘については、瀉下薬と同様、便秘になりやすい食生活等の生活習慣の改善が図られることが重要であり、浣腸薬の使用は一時的なものにとどめることが望ましい。特に乳幼児では、安易な使用を避けることとされている。

 浣腸薬は一般に、直腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがあるため、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避けることが望ましい。

 腹痛が著しい場合や便秘に伴って吐き気や嘔吐が現れた場合には、急性腹症(腸管の狭窄、閉塞、腹腔内器官の炎症等)の可能性があり、浣腸薬の配合成分の刺激によってその症状を悪化させるおそれがある。また、排便時に出血を生じる場合は、痔出血のほか、直腸ポリープや直腸癌等に伴う出血であることもあり、医師の診療を受けることが望ましい。

(a) 注入剤
【用法に関連した注意】
 注入剤の用法に関連した注意事項について。
① 薬液の放出部を肛門に差し込み、薬液だまりの部分を絞って、薬液を押し込むように注入する。
② 注入するときはゆっくりと押し込み、注入が終わったら放出部をゆっくりと抜き取る。また、注入する薬液は人肌程度に温めておくと、不快感を生じることが少ない。
③ 薬液を注入した後すぐに排便を試みると、薬液のみが排出されて効果が十分得られないことから、便意が強まるまでしばらく我慢する。薬液が漏れ出しそうな場合は肛門を脱脂綿等で押さえておくとよい。
④ 半量等を使用する用法がある場合、残量を再利用すると感染のおそれがあるので使用後は廃棄する。

 配合成分としては、浸透圧の差によって腸管壁から水分を取り込んで直腸粘膜を刺激し、排便を促す効果を期待して、グリセリンやソルビトールが用いられる。直腸内の浸透圧変化に伴って、使用時の体調によっては肛門部に熱感を生じることがある。また、肛門から異物を注入する用法であることから、人によっては肛門部の不快感を生じることがある。

 グリセリンが配合された浣腸薬では、排便時に血圧低下を生じて、立ちくらみの症状が現れるとの報告があり、そうした症状は体力の衰えている高齢者や心臓に基礎疾患がある人で特に現れやすいため、高齢者又は心臓病の診断を受けた人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師等に相談がなされることが望ましい。

 また、グリセリンが配合された浣腸薬が、肛門や直腸の粘膜に損傷があり出血しているときに使用されると、グリセリンが傷口から血管内に入って、赤血球の破壊(溶血)を引き起こす、また、腎不全を起こすおそれがある。痔出血の症状がある人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師等に相談がなされることが望ましい。

(b) 坐剤
【用法に関連した注意】
 坐剤の用法に関連した注意について。
① 柔らかい場合には、しばらく冷やした後に使用する。また、硬すぎる場合には、柔らかくなった後に使用する。無理に挿入すると直腸粘膜を傷つけるおそれがある。
② 坐剤を挿入した後すぐに排便を試みると、薬液のみが排出されて効果が十分得られないことから、便意が強まるまでしばらく我慢する。

 配合成分としては、ビザコジルのほか、炭酸水素ナトリウム等も用いられる。

 ビサコジルに関する出題については、Ⅲ-2(腸の薬)を参照して作成のこと。瀉下薬の有効成分として内服でも用いられるが、誤って坐剤を服用することのないよう留意される必要がある。

 炭酸水素ナトリウムは、直腸内で徐々に分解して炭酸ガスの微細な気泡を発生することで直腸を刺激する作用を期待して用いられる。炭酸水素ナトリウムを主薬とする坐剤では、まれに重篤な副作用としてショックを生じることがある。

2)駆虫薬
 駆虫薬は、腸管内の寄生虫に対して、これを駆除するために用いられる医薬品である。一般用医薬品の駆虫薬が対象とする寄生虫は、回虫と蟯虫である。

 いずれも手指や食物に付着した虫卵が口から入ることで感染するが、回虫では、孵化した幼虫が腸管壁から体組織に入り込んで体内を巡り、肺に達した後に気道から再び消化管内に入って成虫となる。そのため腹痛や下痢、栄養障害等の消化器症状のほか、呼吸器等にも障害を引き起こすことがある。蟯虫は、肛門から這い出してその周囲に産卵するため、肛門部の痒みやそれに伴う不眠、神経症を引き起こすことがある。

 駆虫薬は腸管内に生息する虫体にのみ作用し、虫卵や腸管内以外に潜伏した幼虫(回虫の場合)には駆虫作用が及ばないため、それらが成虫となった頃にあらためて使用しないと完全に駆除できない。再度駆虫を必要とする場合には、1ヵ月以上間隔を置いてから使用することとされている。なお、回虫や蟯虫の感染は、その感染経路から、通常、衣食を共にする家族全員にその可能性があり、保健所等において虫卵検査を受けて感染が確認された場合には、一緒に駆虫を図ることが基本となる。

 駆虫薬は、一度に多く服用しても駆虫効果が高まることはなく、かえって副作用が現れやすくなるため、定められた1日の服用回数や服用期間を守って適正に使用されることが重要である。同様に、複数の駆虫薬を併用しても駆虫効果が高まることはなく、副作用が現れやすくなり、また、組合せによってはかえって駆虫作用が減弱することもある。

 駆虫薬はその有効成分(駆虫成分)が腸管内において薬効をもたらす局所作用を目的とする医薬品であり、消化管からの駆虫成分の吸収は好ましくない全身作用(頭痛、めまい等の副作用)を生じる原因となるため、極力少ないことが望ましい。食事を摂って消化管内に内容物があるときに使用すると、消化管内容物の消化・吸収に伴って駆虫成分の吸収が高まることから、空腹時に使用することとされているものが多い。

 駆除した虫体や腸管内に残留する駆虫成分の排出を促すため瀉下薬が併用されることがあるが、ヒマシ油を使用すると腸管内で駆虫成分が吸収されやすくなり、副作用を生じる危険性が高まるため、ヒマシ油との併用は避ける必要がある。

◇ 代表的な駆虫成分、主な副作用

(a) サントニン
 回虫の自発運動を抑える作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられる。消化管から吸収されたサントニンは主に肝臓で代謝されるが、肝臓病の診断を受けた人では、肝障害を悪化させるおそれがあるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

 服用後、一時的に物が黄色く見えたり、耳鳴り、口渇が現れることがある。

 条虫(いわゆるサナダ虫など)や吸虫、鉤虫、旋毛虫、鞭虫等の駆除を目的とする一般用医薬品はない。これらについては、医療機関を受診して診療を受けることが望ましい。

(b) カイニン酸
 回虫に痙攣を起こさせる作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられる。

 カイニン酸を含む生薬成分として、マクリ(紅藻類のマクリ(海人草)の全藻)が配合されている場合もある。日本薬局方収載のマクリは、煎せん薬として回虫の駆除に用いられる。

(c) リン酸ピペラジン
 アセチルコリン伝達を妨げて、回虫及び蟯虫の運動筋を麻痺させる作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられる。

 副作用として痙攣、倦怠感、眠気、食欲不振、下痢、便秘等が現れることがある。痙攣の症状のある人、貧血、著しい栄養障害の診断を受けた人では、それらの症状の悪化を招くおそれがあるため、また、肝臓病、腎臓病の診断を受けた人では、吸収されて循環血液中に移行したピペラジンが滞留して副作用を生じやすくなるおそれがあるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましい。

(d) パモ酸ピルビニウム
 蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示すとされる。
赤~赤褐色の成分で、尿や糞便が赤く着色することがある。水に溶けにくいため消化管からの吸収は少ないとされているが、ヒマシ油との併用は避ける必要がある。また、空腹時に服用することとなっていないが、同様の理由から、脂質分の多い食事やアルコール摂取は避けることが望ましい。


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