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XVI 一般用検査薬
1 尿糖・尿蛋白検査薬
1)尿 中の糖、蛋白値に異常を生じる要因
2)検査結果に影響を与える要因、検査結果の判断、受診勧奨
2 妊娠検査薬
1)妊娠の早期発見の意義
2)検査結果に影響を与える要因、検査結果の判断、受診勧奨
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ⅩⅥ 一般用検査薬
専ら疾病の診断に使用されることが目的とされる医薬品のうち、人体に直接使用されることのないものを体外診断用医薬品という。体外診断用医薬品の多くは医療用医薬品となっているが、尿糖・尿蛋たん白検査薬及び妊娠検査薬については、一般用医薬品(一般用検査薬)として薬局又は医薬品の販売業(店舗販売業、配置販売業)において取り扱うこと認められた製品がある。
一般用検査薬は、一般の生活者が(自覚症状が現れたあとでなく)日常において自らの体調をチェックすることを目的とするものであり、その検査結果から必要に応じて医療機関を受診し、疾患等の早期発見につなげることができるようにするものである。
【検出感度、擬陰性・擬陽性】
検査薬は、対象とする生体物質を特異的に検出するように設計されている。しかし、検体中の対象物質の濃度が極めて低い場合には検出反応が起こらずに陰性の結果が出る。検出反応が起こるための最低限の濃度を検出感度(又は検出限界)という。
検体中に存在しているにもかかわらず、その濃度が検出感度以下であったり、検出反応を妨害する他の物質の影響等によって、検査結果が陰性となった場合を擬陰性という。逆に、検体中に存在していないにもかかわらず、検査対象外の物質と非特異的な反応が起こって検査結果が陽性となった場合を擬陽性という。
生体から採取された検体には予期しない妨害物質や化学構造がよく似た物質が混在することがあり、いかなる検査薬においても擬陰性・擬陽性を完全に排除することは困難である。
1 尿糖・尿蛋白検査薬
1)尿中の糖・蛋白値に異常を生じる要因
泌尿器系の機能が正常に働いていて、また、血糖値が正常であれば、糖分や蛋白質は腎臓の尿細管においてほとんどが再吸収されるため、尿糖値は160~180mg/dL程度、尿蛋白値は
15mg/dL以下である。
尿糖値に異常を生じる要因は、一般に高血糖と結びつけて捉えられることが多いが、腎性糖尿、妊娠糖尿等のように高血糖を伴わない場合もある。尿中の蛋白値に異常を生じる要因については、腎臓機能障害によるものとして腎炎やネフローゼ、尿路に異常が生じたことによるものとして尿路感染症、尿路結石、膀胱炎等がある。
2)検査結果に影響を与える要因、検査結果の判断、受診勧奨
【検査結果に影響を与える要因】
尿糖・尿蛋白の検査結果に影響を与える主な要因として以下のものがある。
一般に、検出感度を鋭敏にしようとすると、非特異的な反応を起こりやすくなって擬ぎ陽性を生じる可能性が高くなる。また、擬陽性を生じることを避けるため特異性を高めると、検出感度が鈍くなる。
(a) 採尿に用いた容器の汚れ
糖分や蛋白質が付着している容器に尿を採取すると正確な検査結果が得られないので、清浄な容器が使用される必要がある。
(b) 採尿のタイミング
尿糖の場合、原則として食後(1~2時間)の尿を検体とする。尿蛋白の場合、原則として早朝尿(起床直後の尿)を検体とし、激しい運動の直後は避ける必要がある。
尿糖・尿蛋白同時検査の場合、早朝尿(起床直後)の尿を検体とするが、尿糖が検出された場合には、食後(1~2時間)の尿について改めて検査して判断する必要がある。
(c) 採尿の仕方
出始めの尿では、尿道や外陰部等に付着した細菌や分泌物が混入することがあるため、中間尿を採取して検査がなされることが望ましい。
(d) 検体の取扱い
採取した尿を放置すると、雑菌の繁殖等によって尿中の成分の分解が進み、検査結果に影響を与えるおそれがあるので、なるべく採尿後速やかに検査がなされることが望ましい。
(e) 検査薬の取扱い
尿糖又は尿蛋白を検出する部分を直接手で触れると、正確な検査結果が得られなくなることがある。また、長い間尿に浸していると検出成分が溶け出してしまい、正確な検査結果が得られなくなることがある。
(f) 食事等の影響
通常、尿は弱酸性であるが、食事その他の影響で中性~弱アルカリ性に傾くと、正確な検査結果が得られなくなることがある。また、医薬品の中にも、検査結果に影響を与える成分を含むものがある。医師(又は歯科医師)から処方された薬剤(医療用医薬品)を使用している場合には、治療を行っている医師等又は調剤を行った薬剤師に相談するよう説明がなされることが望ましい。
【検査結果の判断、受診勧奨】
尿糖・尿蛋白検査薬は、尿中の糖や蛋白質の有無を調べるものであり、その結果をもって直ちに疾患の有無や種類を判断することはできない。
尿糖又は尿蛋白が陽性の場合には、疾患の確定診断や適切な治療につなげるため、早期に医師の診断を受ける必要がある。また、検査結果では尿糖又は尿蛋白が陰性でも、何らかの症状がある場合は、再検査するか又は医療機関を受診して医師に相談することが望ましい。
早朝尿は、常に一定の条件で検査がなされるのにも適している。
2 妊娠検査薬
1)妊娠の早期発見の意義
妊娠の初期(妊娠12週まで)は、胎児の脳や内臓などの諸器官が形づくられる重要な時期であり、母体が摂取した物質等の影響を受けやすい時期でもある。そのため、妊娠しているかどうかを早い段階で知り、食事の内容ivや医薬品の使用に適切な配慮がなされるとともに、飲酒や喫煙、風疹や水痘(水疱瘡)などの感染症、放射線照射等を避けることが、母子の健康にとって重要となる。
2)検査結果に影響を与える要因、検査結果の判断、受診勧奨
【検査結果に影響を与える要因】
妊娠が成立すると、胎児(受精卵)を取り巻く絨毛細胞からヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)が分泌され始め、やがて尿中にhCGが検出されるようになる。妊娠検査薬は、尿中のhCGの有無を調べるものであり、通常、実際に妊娠が成立してから4週目前後の尿中hCG濃度を検出感度としている。
その検査結果に影響を与える主な要因として以下のものがある。
(a) 検査の時期
一般的な妊娠検査薬は、月経予定日が過ぎて概ね1週目以降の検査が推奨されている。月経周期が不規則な人や、月経の日数計算を間違えた場合など、それよりも早い時期に検査がなされ、陰性の結果が出たとしても、それが妊娠していないこと(単なる月経の遅れ)を意味するのか、実際には妊娠していて尿中hCGが検出感度に達していないことによる擬陰性であるのか判別できない。
(b) 採尿のタイミング
検体としては、尿中hCGが検出されやすい早朝尿(起床直後の尿)が向いているが、尿が濃すぎると、かえって正確な結果が得られないこともある。
(c) 検査薬の取扱い、検出反応が行われる環境
尿中hCGの検出反応は、hCGと特異的に反応する抗体や酵素を用いた反応であるため、温度の影響を受けることがある。検査薬が高温になる場所に放置されたり、冷蔵庫内に保管されていたりすると、設計どおりの検出感度を発揮できなくなるおそれがある。
また、検査操作を行う場所の室温が極端に高い又は低い場合にも、正確な検査結果が得られないことがある。
(d) 検体の取扱い、検体中の混在物質
採取した尿を放置すると、雑菌の繁殖等によって尿中の成分の分解が進み、検査結果に影響を与えるおそれがあるので、なるべく採尿後速やかに検査がなされることが望ましい。高濃度の蛋白尿や糖尿の場合、非特異的な反応が生じて擬陽性を示すことがある。
妊娠が成立した日を厳密に特定することは困難なことがあり、通常、妊娠週数は最後の月経が始まった日から起算される。
例えば、妊娠期間中は、食事中に含まれる魚介類(クジラ等を含む。)の種類と量に留意される必要がある。また、鉄分等の栄養素が不足し、貧血になりやすくなる。
妊娠期間中に風疹や水痘などの感染症にかかると、胎児に先天異常を生じることがある。
(e) ホルモン分泌の変動
絨毛細胞が腫瘍化している場合には、妊娠していなくてもhCGが分泌され、検査結果が陽性となることがある。また、本来はhCGを産生しない組織の細胞でも、腫瘍化すると
hCGを産生するようになることがある(胃癌、膵癌、卵巣癌等)。
経口避妊薬や更年期障害治療薬などのホルモン剤を使用している人では、妊娠していなくても尿中hCGが検出されることがある。閉経期に入っている人も、検査結果が陽性となることがある。
(f) 異常妊娠
子宮外妊娠や胞状奇胎viなどを生じている場合には、妊娠しているにもかかわらず検査結果が陰性となることがある。
【検査結果の判断、受診勧奨】
妊娠検査薬は、妊娠の早期判定の補助として尿中のhCGの有無を調べるものであり、その結果をもって直ちに妊娠しているか否かを断定することはできない。妊娠の確定診断には、尿中のホルモン検査だけでなく、専門医が問診や超音波検査などの結果から総合的に妊娠の成立を見極める必要がある。
妊娠が成立していたとしても、正常な妊娠か否かについては、妊娠検査薬による検査結果では判別できないので、妊娠週数が進むままに漫然と過ごすのでなく、早期に医師の診断を受けることが望ましい。また、検査結果が陰性であって月経の遅れが著しい場合には、擬陰性であった(実際は妊娠している)可能性のほか、続発性無月経等の病気であるおそれもあり、医療機関を受診して専門医へ相談がなされることが望ましい。
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