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暮しと健康について |
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日々の暮らしが、健康を守ります。
私たちの健康は、日々の暮らしによって大きく左右されます。2019年12月に中国武漢市から発生したとされる新型コロナウイルス感染症(COVI-19D)は、私たちの生活と健康に大変な影響を与えました。今尚、その影響は計り知れず全世界に及んでいます。
WHOの報告によれば、2021年12月までの全世界でのコロナ延感染者数は約2億8651万人で、死者数は約543万人を超えています。
わが国では、2020年の厚生労働省人口動態調査によれば年間のコロナ感染者数は約23万人で、死者数は年間3,466人でした。そして、発生から2021年12月までの、コロナ延感染者数は累計約173万人で、死者数は累計約18千人以上に達しています。一部で医療崩壊も生じ、現在もなお収束していません。
過去、戦時下の混乱を除き近代日本において、流行性の感染症が暮らしに多大な影響を与えたのは、1918年(大正七年)に発生したスペイン風邪があります。当時の様子は志賀直哉の作品「流行感冒」に書かれ、伝えられています。
1918年(大正七年)秋から1920年(大正九年)に流行したこのスペイン風邪は、当時のわが国の人口が5,500万人の中で感染者は2,380万人(感染率43%)、死者が38万人(死亡率1.6%)と驚異的な数字が残っています。収束まで約3年かかり、当時のパンデミックの様子が深刻・甚大だったことがわかります。
今回のコロナ禍において、ほとんどの方がマスクを常時着用し、手洗いのアルコール消毒を実行し、三密(密閉・密集・密接)を避け、外国からの入国制限や国民のワクチンの接種等々による感染拡大の防止の努力した結果、世界的な感染拡大の中にあってわが国では重症者や死者を抑制することはできても、新型株による感染者数は今なお増大しています。
私たちの暮らしはこのコロナ禍に於いて多大の影響を受け、日常生活も一変しました。長期的な三密(密閉・密集・密接)対策や外出自粛制限等の結果、家族や友人、学校、地域の人間関係も疎遠になり、多くの人がストレスを感じる社会となりました。特に、介護施設や病院の入院患者の面会では、完全に遮断され、コミュニケーションが取れない状態にもなってしまいました。こうしたコロナ禍におけるストレスは、私たちの心身に大きな影響を与えました。
外出行動の制限やテレワーク等で運動不足や食べ過ぎによって、体重が増え「コロナ太り」!?になったり、新しく希望に満ちたキャンパスライフを期待していた学生達にとっても、対面授業からオンライン授業中心などになり、多くの不安と不満を感じることとなりました。
こうしたコロナ禍による急激な社会的変化は、コロナ禍以前の生活から大きく変化をもたらすことになり、多くの人が生活や健康に不安を感じることとなったのですが、「自分の健康は自分で守る」という考え方が大切で、「無理せず」「自分のペースで」できることから日常生活を取戻ししましょう。
私たちが健康を維持していくために、これからも「自分の健康は、自分で守る」といった考えのもと、「病気を予防し、健康で長生き」するということを日々実践しましょう。
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食べ物と生活の知恵
昔から、「薬食同源」とか「医食同源」と言われています。これは、「薬」も「食べ物」もすべて同じで、「食べ物」が「薬」になるという意味です。しかし、必ずしも「食べ物」イコール「良薬」であると言ったものでなく、「食べ物」には「食性」という「薬」と同じ様な作用、反作用があり、場合によっては「薬毒同源」とか「食毒同源」という事もありえるのです。 いずれにしても、食べ物が大切であることには変わりなく、まさに「食は命なり」です。食べ物の食べ方次第で私達の健康を左右します。
21世紀の現代日本社会において、三大死亡原因は「ガン」、「心臓病」、「脳卒中」であり、食事等をはじめとする「生活習慣」がその誘因といわれています。世界一を誇る長寿国である日本において、いま私達の願いは、「病んで長生きする」のではなく、「健康で長生きする」ことです。
「生活習慣病」と「未病」について
近年、「生活習慣病」という新たな概念が、平成8年(1996年)の公衆衛生審議会の提案を受け、厚生白書でも導入されました。「生活習慣病」というのは,「食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が,病気の発症・進行に関与する疾患群」と定義されており,肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常が代表的な疾患で、日々の生活習慣がその発症に深くかかわっていることが明らかになっています。
白書では、具体的に生活習慣との関連で,次のような疾病を例示しています。
(1) 肺がんは喫煙が,また,大腸がんは食生活(動物性脂肪の過剰摂取)が,その発症に関係している。
(2) 脳卒中の発症には,食塩の過剰摂取などの食事の偏り,ストレス過剰などの生活習慣が関係している。
(3) 動物性脂肪などに含まれるコレステロール摂取量と虚血性心疾患の死亡率は関係がある。
(4) 糖尿病には,カロリーの過剰摂取と運動不足による肥満が関係している。
(5) アルコール摂取量と肝硬変の発症率は関係がある。
これらの疾病は,日々の生活習慣が影響を与えるものなのです。
「生活習慣病」は、過食、運動不足、喫煙、ストレスなど日々の生活習慣によって発症、重症化する疾患ですが、その予防のためには食事など日々の生活習慣を改善しなければならず、この習慣を改善することはなかなか難しいことといえます。根気のいる努力が必要です。
この生活習慣病の対策をするというのは、病気を「健康か病気か」という二元的にとらえるのでなく、普段の健康状態と病気の状態を連続的にとらえ、病気の発症をその予兆から知り、予防すると言うことです。そして「病気になる前に治す」という予防医学のもとで、たとえ発病した場合であっても重症にならないよう早期に対処・治療するということです。
これまでの「早期発見,早期治療」という病気治療の第1次目標から、更に一歩進んで「病気になる前に治す」という「健康増進・発病予防」という予防医学の考え方が重視されるようになったということです。
そして1998年にWHO(世界保健機関)で「メタボリック症候群」( Metabolic syndrome)という診断基準を発表され、広く「メタボ」として知られるようになりました。わが国でも、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧、血糖、脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、「メタボリックシンドローム」と診断され、それが普段の生活習慣と深くかかわりっていることかわかっています。
このいわゆる「メタボ」というのは、肥満、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の複合の病態で、それぞれが軽度であっても、重なると生活習慣病としての危険性が増し、ときに重篤な合併状態を引き起こし、死に至る場合もあるということです。「死の四重奏」とも呼ばれ、単独でも恐ろしい病気ですが、重複すると命にかかわる危険度が増すということです。それでも、早期の場合、食事療法、運動療法、禁酒・禁煙、ストレスの軽減などにより大幅な改善しうる可能性もあります。
そこで「健康増進・発病予防」という予防医学の視点から、国は制度として40〜74歳の被保険者・被扶養者を対象に、「特定健診・特定保健指導」が行われるようになりました。
「特定健診(いわゆるメタボ健診)」とは、運動不足・かたよった食事・喫煙などの生活習慣が引き金となる生活習慣病の発症・重症化を予防することを目的とした健康診断で、
「特定保健指導」とは、その健診の結果に基づき必要と認められる方に対して行われる健康指導です。
これら施策によって、国民の生活の質の維持・向上のために、高血圧症、糖尿病、脂質異常症等の発症、あるいは重症化や合併症への進行の予防に重点を置いたのです。
こうした「生活習慣病」や「メタボ対策」という取組みは、漢方でいう「未病」と同じ考えです。古来、漢方の世界では、「未病」という概念があり、「未病」とは、「未ダ病ニアラズ」の状態を言います。そして、「上工は未病を治し,中工は已病(いびょう)を治す」と言われ、名医は、病気となってからでなく、病気になる前の未病状態から治療を始めるべきという考え方です。漢方ではこの未病を得意としますが、西洋医学が発達した今日にあっては、西洋医学と共に協力・協調して、病気予防対策を実践していくべきです。
しかし、生活習慣病への取組みは、国の諸施策だけに頼る他力本願でなく、自ら積極的に生活習慣を正すという自助努力が必要です。日々健康で健やかに過ごすために、「自分の健康は自分で守る」ことを常に意識し、積極的に健康管理に気をつけることが大切です。そして「病気になる前に治す」という予防医学のもと、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」という「セルフメディケーション」という考え方が必要になってきました。 |
安心立命の道へ
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