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生薬の知識 |
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生薬について
薬という字は、病気が草によって楽になるということから「草かんむり」に「楽」と書いて「薬」(くすり)となりました。これまで人類は長い歴史の中で、病気を治すために身の周りの植物・動物・鉱物などの天然産物から、数多くの薬を探し求め、その知識・経験を伝承してきました。
今から4~5千年前、古代中国の神「神農」は、百草をなめてその効能を確かめて、人々に医療と農耕の術を教えたと伝えられています。そして世界最古の本草書「神農本草経」として現代に伝えられてきました。この書の著者および著作年代については不明であるが、前漢末期(西暦紀元前後)と推定されていますが、このように自然界から薬草を採取し、病気治療に役立つものとして選ばれたのがいわゆる「生薬」です。
「神農本草経」では植物を中心に動物・鉱物も加え、一年の日数に合わせて365種の生薬が記載され、それを上品(120種)、中品(120種)、下品(125種)に分類しています。
上品:養命薬(生命を養う目的の薬)で、無毒で長期服用可能なもの。
中品:養性薬(体力を養う目的の薬)で、使い方次第で毒にもなるので注意が必要なもの。
下品:治病薬(治療薬)で、毒が多いので長期にわたる服用はよくないもの。
このように、「神農本草経」は薬効別に3つに分類しているのが特徴です。(上薬、中薬、下薬ともいう)現代の「リスク区分」にも相通じる考えではないかと思われます。
また、江戸時代には生薬は、漢方薬の原料という意味で薬種と呼ばれ、それらを取扱う薬種商(薬種問屋)が、大阪では道修町に集まり全国に流通させました。そして、大阪のお祭りは、「1月10日のえべっさんに始まり、11月23日の神農さんで終わる」といわれ、神農祭は一年を締めくくる「とめのお祭り」として多くの人で賑わっています。
生薬と漢方薬について
こうした生薬を基礎にして、中国古代思想と結びつき理論化したのが漢方です。この漢方での生薬の使われ方は、ほとんどが数種類の組合わせによって使われ、漢方処方として成り立っています。
現在、日本で使われている多くの漢方処方は、漢代の「傷寒論」、「金匱要略」、宋代の「和剤局方」、明代の「万病回春」などの古典からの出典とするものがほとんどです。中でも傷寒論、金匱要略はその中心で、「漢方のバイブル」といわれています。
生薬と民間薬について
一般に、民間薬は、医療の専門家ではない庶民の間で伝承されてきた限られた薬草のことで、その多くは薬用植物を起源とし、経験と伝承によって理論的な背景もなく単独で使われてきました。中でもゲンノショウコ、センブリ、ドクダミは三大民間薬として広く使われてきました。民間薬も漢方薬も同じ生薬であっても、使い方も使用部分も全く違います。
今日、広く病院や一般市販薬において使われている薬は、新薬とか合成薬といい、化学合成によって作られた医薬品のことです。新薬は科学技術の発達によって築き上げられてきたもので現代医療の発展に大きく貢献してきましたが、リスクも高まりました。「薬は逆から読むとリスク(risk)」と言われます。どんなクスリにも主作用(期待する効果)や副作用(期待しない効果)があり、副作用のない薬はありません。そこで薬を使用する際はこのリスクをよく知り、上手に管理して、期待する効果を手に入れることがなにより大切です。ただ一般的に生薬は、新薬よりリスクは低いものです。
日本薬局方における生薬について
日本薬局方は、薬事法第41条により、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書です。日本薬局方の構成は通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条からなり、収載医薬品については我が国で繁用されている医薬品が中心となっています。
日本薬局方は100年有余の歴史があり、初版は明治19年6月に公布され、今日に至るまで医薬品の開発、試験技術の向上に伴って改訂が重ねられ、現在では、第十六改正日本薬局方及び第十六改正日本薬局方第一追補が公示されています。
ここでは「第14改正日本薬局方解説版」(広川書店)に基づいて主な生薬について引用・解説していますが、最近の第十六改正日本薬局方及び第十六改正日本薬局方が公示されていますので厚生労働省のホームページを参照ください。 ⇒http://moldb.nihs.go.jp/jp/
生薬の定義
生薬とは、日本薬局方に「生薬は動植物の薬用とする部分、細胞内容物、分泌物、抽出物又は鉱物などであり、生薬総則及び生薬試験法を適用するもの」と規定されています。生薬は天然物であり、簡単な加工をして医療用にとしたものです。そして、その大部分は、植物を起源とするものが多く、生薬の形態から1)全形生薬、2)切断生薬(いわゆるカット生薬、刻み)、3)粉末生薬と分かれています。その品質は「日本薬局方」、「日本薬局方外生薬規格」によって保持されて、公的に品質管理されています。そして、その取り扱いは「医薬品」として薬事法の適用を受けて厳しく運用されています。
医薬品としての生薬は、天産物であるため、その品質保持に関して、規格が厳しく、原植物・原動物が特定され 性状、確認試験、純度試験、定量法など決められています。これらの基準を満たしたものが医薬品として認められます。しかし、ほとんどの生薬は、漢方製剤及び生薬製剤(いずれもエキス剤)として流通しており、それ以外に漢方の湯液用(調剤用)として用いられています。 また、生薬には多くの成分があり、これを利用して色々な医薬品の製造や、食品工業、香粧品などの原材料にも使われています。
「日本薬局方 生薬総則」
生薬について次のように規定されています。
1. 医薬品各条の生薬は動植物の薬用とする部分、細胞内容物、分泌物、抽出物又は鉱物などであり、生薬総則及び生薬試験法を適用する生薬は次のとおりである。(以下省略)
2. 生薬は通例、全形生薬、切断生薬又は粉末生薬に分けて取り扱う。
全形生薬は、その薬用とする部分などを乾燥し、又は簡単な加工をしたもので医薬品各条に規定する。
切断生薬は、全形生薬を小片もしくは小塊に切断もしくは粉砕したもの、又は粗切、中切もしくは細切したものであり別に規定するもののほか、これを製するに用いた全形生薬の規定を準用する。
粉末生薬は、全形又は切断生薬を粗末、中末、細末又は微末としたものであり、通例、細末としたものについて医薬品各条に規定する。
3. 生薬は、別に規定するもののほか乾燥品を用いる。乾燥は、通例60℃以下で行う。
4. 生薬はカビ、昆虫又は他の動物による汚染物又は混在物及びその他の異物をできるだけ除いたものであり、清潔かつ衛生的に取り扱う。
5. 生薬の基原として「その他同属植物」、「その他同属動物」、「その他近縁植物」又は「その他近縁動物」などと記載するものは、通例、同様の成分薬効を有する生薬として用いられる原植物または原動物をいう。
6. 生薬の性状の項はその生薬の代表的な原植物又は原動物に基づく生薬について、通例、その判定基準となる特徴的な要素を記載したものである。ただし、その項の数値は、鏡検時のものを除き、およその基準をしめしたものである。
7.粉末生薬はこれを製するに用い全形生薬又は切断生薬中に含まれていない組織の破片、細胞、細胞内容物又はその他の異物を含まない。
8. 粉末生薬のうち別に規定するものについては賦型剤を加え、
9. 生薬は、別に規定するもののほか、湿気及び虫害などを避けて保存する。虫害を防ぐため、適当なくん蒸剤を加えて保存することができる。ただし、このくん蒸剤は常温で揮発しやすく、その生薬の投与量において無害でなければならない。また、その生薬の治療効果を障害し、又は試験に支障をきたすものであってはならない。
10. 生薬に用いる容器は、別に規定するもののほか、密閉容器とする。
以上 |
大阪市,淀川区,三国,商店街,nakajima392.com,阪急三国駅下車
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